BLOG 2019.03.02

UX(ユーザーエクスペリエンス)って結局何で大事なんだっけ?

社会的なニーズとして、「モノ」ではなく「経験・体験」を提供する、というのは昨今のビジネスシーンではもう事実上のスタンダードにまでなってきてます。

 

同じようにデザインの現場でも、クライアントの皆さまから「ユーザーエクスペリエンス(ユーザー体験・UX≒UXデザイン)」という言葉が出ることも珍しくなくなってきており、製品、Webサイト、アプリ、などの「サービス」を作る上でも大事な指標とされています。

 

この「UX」というものがなかなかに曲者で、解釈の幅がものすごく広く、肯定的な意見、否定的な意見も存在し、そのどちらの立場の意見にも「確かに」と思わせられるようなことがあったりするのですが、どうやらUXは使い用によっては、商品やサービス、ビジネスのドライバーになることが往往にしてあるようなのです。

 

そこで、「UX」の定義、その価値を今一度確認し、どう実践に使えるのか、どのようにしてUXをデザインするのかをここで再確認したいと思います。

 

UXの定義

UXの定義に関しては、その議論はとどまるところを知りません。詳しく知りたいかたは以下を是非。

 

 

一応国際規格化(ISO 9241-210)されていて、

 

「UXとは、製品、システムまたはサービスを使用した時、および/または使用を予測した時に生じる個人の知覚や反応」  

 

ということになっています。

 

ちょっとわかりにくいので言い換えると、

 

「ユーザー体験」というのは、あるサービスの利用前/利用中/利用後の包括的な体験

 

という感じになります。

UX白書内の図をちょっと改変・追記したものを載せておきます。

 

 

この「包括的な体験」を、

 

「どこの誰に」といった社会的視点から文脈をしっかり設計し、

「いつ何を」といった個人のライフスタイルや文化的視点からコンテンツや活用方法をを考え、

「どのように」といったユーザーとサービスの接点(視覚・行動)をデザインする


というのがUXデザインで、さらにその体験が量産・再生産される持続可能な仕組みまで含めてデザインすることが大事なのかな、と私は理解しております。

 

そしてそれを実現するためには、「みんなで(ビジネスマン、デザイナー、エンジニア)でやる」といったことがとても重要なので、昨今ではデザインの意味が広くなってきていたり、いちデザイナーに求められるスキルセットが横断的になってきたりしているのではないかと思っております。

 

UXの重要性

UXデザインでやるべきことをはなんとなくわかりました。で、UXってなんで大事なんでしたっけ?

 

なぜここまでUXが重要視されているのかは、諸説あるかとは思いますが、大きくは以下の2つが要因になっているのではないかと、思っております。

 

  • 社会の変化
  • 技術の変化

 

ひとつずつ軽く説明したいと思います。

社会の変化

現在のように「コト消費」が進む以前から、体験が一番高く売れると言われていたようです。「経験経済」(2000年初版)という本の中でも、「体験の価値は製品の数十倍から数百倍である」と、記されてます。ちょっと図解してみました。

 

例えば、コーヒーカップ 1杯分のコーヒーの価格(あくまで価格例です)は、生豆の段階(コモディティ)では 5円〜10円です。

それを加工業者が豆を挽いて袋に詰めて店で売る(製品)と 30円〜50円程度になります。

さらに、その豆を使ってコーヒーを淹れて提供する(サービス)と100円~300円になります。

そして、同じ品質のコーヒーでも洒落たカフェやホテルのラウンジで提供する(体験)と500円〜800円になります。

 

そして近年、社会的な流れとして「モノ」ではなく経験・体験の「コト」を消費する時代が訪れました。モノが未成熟だった時代は、スペック勝負で競合よりも高性能な製品を発表すれば注目されたので、その先の体験まで考えなくともたくさん売れる時代がありました。しかし現在は多くの市場が成熟し、単純な「モノ」の良さだけの差別化が難しくなり、ユーザーはメモラブルで、感動的な「体験」に対して価値を求めるようになりました。

 

つまり、成熟分野が増えて、良い商品というだけではユーザーに価値を感じてもらえなくなり、ユーザーの体験価値まで考えられた製品やサービスが求められるようになり、UXが重要視されている、というのは一つあるのではないかと思います。

 

(そして、「体験」ビジネスもまた成熟すると差別化が難しくなり、イノベーションが求められ、、、という話はまだ別の機会に)

 

 

技術の変化

やはりスマートフォンの登場というのは、切っても切り離せない要因です。iphoneをはじめとするスマートフォンが爆発的に広まり、人々の情報取得行動に大きな変革が起こりました。

 

スマートフォン以前、特にweb系サービスにおいては、「PC」での利用シーンが前提だったので、ユーザーの利用状況(屋内、机と椅子がある)がある程度想定できました。

 

しかしスマートフォンには利用状況の制限がほとんどありません。それにより、ユーザーに目的を達成してもらい満足してもらうには、そのユーザーの特定のみならず、使われる状況や前後の流れといった文脈を考えて設計する必要が出てきました。

 

例えば、同じ宿泊情報サイトを使うとしても、「女子大生のAさんが、大学のコンピュータルームで友達と一緒に卒業旅行の計画を立てている」場面と、「商社の営業マンBさんが、移動中の新幹線の中で出張先の宿の手配をしている」場面では、状況は随分異なります。その結果、ユーザーがサイト内で利用する機能や情報も大きく異なるのは容易に想像できます。

 

web系サービスのみならず、ブランド戦略や広告設計においても、それまではテレビ、ラジオ、雑誌、PC、など特定の状況でしか情報を取りに行けなかったのに対して、いつでもどこでもスマートフォンを介して情報を探し、見つけ、得られる状況になり、大きく手法が変わりました。

 

このようにスマートフォンの出現がトリガーになり、人々の情報取得行動に大きな変化が起こり、サービスやビジネスを成功させるには、前記したように、「どこの誰に」「いつ何を」「どのように」といった、包括的な体験を踏まえて戦略を立てる必要がある、ということになってきたのだと思います。

 

まとめ

今回なぜこのような記事を書こうかと思ったかというと、どうしても「UXデザイン」というと、「ペルソナ」「カスタマージャーニー」「ユーザー調査」などといった、手段が目的になってしまいがちで、本質を見失いがちになりやすいなぁ、と感じており、今一度「UX頑張るとどんな良いことがあるんだっけ」を再確認したかったのです。

 

とはいえ僕自身はUXを頑張ることが本業というより、「しっかりとUXに理解を置いたデザインをする」ということが、当面の課題だったりするわけですが。

 

デザイナーが一人で入り口から出口までのUXを全部頑張る、というのは到底不可能だと感じておりますので、各分野への理解は深めつつも、得意分野に軸足を置き、チームみんなでクライアントにとっての良いデザイン体験を提供していければ、と思っております。

 

引用

All about UX 

hcdvalue

UX白書日本語訳

なぜUXという言葉は広まったのか 

 

引用(書籍)

融けるデザイン

 

ユーザビリティエンジニアリング(第2版)

 

経験経済

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